「体の声を聞く力を取り戻してほしい」

助産院『町のさんばさん』 院長・助産師
川野敦子先生

1977年に助産師免許を取得後、87年4月まで北九州市立戸畑病院に勤務。その後、約10年間、フリーの助産師を続けながら食に関しての研究や東洋医学を勉強する。98年、福岡県北九州市に『町のさんばさん』設立。植物が芽吹き、成長し、実がなる。

[町のさんばさん] https://www.machinosanbasan.com/
福岡県北九州市八幡西区千代4-9-8 TEL&FAX 093-618-4764

|お産が重くなっている

39 年間、助産師を続けていて、最近、お産が重い、 羊水の状態があまりよくない女性が増えているように 思います。出産が長引く、子宮の収縮が悪い、出血が多い方、また産後、子宮内膜に炎症を起こし、産褥熱(出 産後24時間以降~10日までの間で38度以上の高熱が 2日以上続く)を発する方も多くなっています。

また、生まれてくる子どもの髪は、かつては薄くてやわらかいものでしたが、今は真っ黒でたくさん生えていることがたびたびです。昔の赤ちゃんよりも少し成長し、“ 老けて ”生まれてくるのだと思います。

その理由を探るために、まずは昔と何が変わっているのかを考えると、生活の中に入り込んでいる化学物質が、グンと増加していることが浮かびます。もちろん、 化学物質に助けられている面もあるので、0にするこ とは難しいのですが、無駄に多くを使用するのは、避ける必要があると思います。   

自分の生まれもった髪の色、しかも健康な髪をケミ カルのカラーでほかの色に染めること、パーマをかけることもそうです。頭皮から入った化学物質が身体をめぐり、子宮へ届く可能性がないとは言えません。自分を守るため、そして子どもを守るためにも、やらなくてよいことは、やらない方がよいのです。

|自分の体と向き合ってほしい

多くの女性は、化粧法や髪型など外見の美についての情報収集にはとても敏感です。でも、身体の内側については鈍感になっているように思います。

一時ブームとなっていた、朝出かける前に髪を洗う「朝シャン」。この行動は、体をとても冷やします。体の冷えは、子宮に悪影響を及ぼします。生理痛が重い方はとくに注意が必要です。昔から、頭皮と子宮は密接な関係があると言われ、月経時や出産後の洗髪は子宮を冷やし、月経血排出不全や子宮の復古を遅らせるので厳禁とされていました。昔はほとんどの人が心得ていましたが、今は気にする人が少なくなっています。
妊娠中に髪を染めるのは、絶対に止めてほしい(※1)。ケミカルのヘアカラーの薬剤がお腹の子どもに及ぼす影響について、危険を指摘する声、心配ないという意見などさまざまありますが、現状では、危険がないと言える理由は何もありません。子どもを守ることができるのはお母さんです。赤ちゃんはお母さんのお腹の中にいる間に30億倍もの細胞を増やし、一気に成長します。その成長率は生涯の中で最大限なのです。

※1(編集部注)日本ヘアカラー工業会(http://www.jhcia.org)でも、「病中、病後の回復期、生理時、妊娠中にヘアカラーはしない」「かぶれを起こす可能性がある」(http://www.jhcia.org/qa/qa01/)と注意を促しています。

|不自然なことを見極める力をつける

助産院『町のさんばさん』では、大学と協力し、助産師になるための教育実習生を受け入れています。命の尊さについて考えることから始まり、体の仕組み、気をつけたいことなど、一つひとつ伝えていきます。ときには、うるさいと感じることもあると思います。でも、伝えていくことが私の使命だと思っています。

体のことをきちんと知って、体に不自然なことを見極めて避ける。体の役割を理解して、体を大切に思い、その日の体調によって何が必要なのか、必要でないのかを感じる。生きるためには、このことがもっとも大切なことだと思います。

パーマやケミカルのヘアカラーは、体を傷つける可能性はあっても、命を救う可能性はありません。それでもやりたいという方は、それは個人の自由です。ただ、薬剤を洗い流すことで環境を破壊する可能性があることも、心に留めてほしいのです。100%自然のままに暮らすのは難しいことですが、今ある自然を無意味に壊すことは、できる限り避けたいと思います。

新しい生命が誕生する瞬間に立ち会うとき、とても尊い時間を感じます。赤ちゃんも私たちも、自然に生かされています。自然の恵みに感謝する心を育て、子どもたちにも自然を残すようにできたらと願います。


「化学物質を減らさなければ病気は減らない」
平田肛門科医院 院長 平田雅彦先生