はじめに

私は南青山で美容室を営んでいます。そのかたわら週3日は地方でワークショップを開催し、100パーセント天然植物の髪染め「ヘナ」の普及に努めてきました。ヘナを使った施術は30年程前から始めました。

当初は材料のヘナをインドの複数の業者から直輸入して使用していましたが、品質については正直不満もありました。農場で収穫されるヘナの葉はほとんど農薬の必要もないものなのですが、収穫・乾燥して粉末加工される際に小規模な零細工場が多いこともあって、衛生管理状態に問題があります。輸入後に国内で顕微鏡チェックすると、かなりの雑菌が混じっていることもありました。また、業者によっては鮮やかなグリーンに見せるために、化学薬品の混ぜ物をしているなど悪質なところもあります。働いている人たちの健康を侵しかねない劣悪な現場もあるのです。そのような中、高品質で安全なヘナを求め、探し回っていたところ、オーガニックにして衛生管理も行き届き、かつ労働者の健康や地域の環境にも配慮して製造しているというCNP社に行き当たりました。ヘナだけでなく、他の薬用植物多種類を管理農場で無農薬・有機栽培している会社で、インド国内の有機認証だけでなく、フランス、EU、アメリカなどの認証も取っています。化学物質、酸化物、重金属、GMO(遺伝子組み換え作物)ほか健康や環境に害を引き起こす恐れのある成分は使わない、また動物実験もしていない、製造過程での水や土壌を汚染せず、太陽エネルギーを活用するなど、「究極の安全と安心」につながる製品を作っている会社でした。僕はすぐに連絡を取って、その後、インドの製造施設も見せてもらいに行ったのですが、その衛生的な管理の徹底ぶりと、会長・社長のプラジャパティさん父子の熱い信念に触れ、深く心を動かされました。

次に紹介するのは、CNP社の「私たちの信念」という文書です。

”持続可能な自然に戻ること”

「Cultivator Natural Products Pvt.Ltd.は、自然本来の方法で母なる自然に戻る、という信念を固めました。自然を持続維持すること、その可能性を追い求めることが私たちの誇りです。私たちの神学(神と人間の世界を研究する学問)は、来たるべき時代のために乏しい資源を保護することです。

私たちは次のことに努力しています。

●土壌の保全

整然とした境界栽培場・有機肥料を土壌に戻し、土壌の健全化を図る

●水の保存

滴下灌漑システムを適用する

●生物多様性の維持

すべてにおいて化学薬品を使わずに、自然のままに育て、収穫すること。自然界の動物たちを魅了する(動物たちが自然に集まってくるような魅力的な)植物共同体の土地(植物が育つ土地)を維持する

●浪費しない

リデュース(削減)、リユース(再利用)、リサイクル、そしてオフィスや会社、 処理施設、倉庫まで、すべて浪費することのないように計画する

●グリーンエネルギー

すべての農場(製品となる植物の農場)に太陽エネルギーを設置する。処理工場では屋根に設置した太陽発電システムを活用する

【品質保証】
「Cultivator製品は、品質の面において自信を持って使用をおすすめできます。製品の品質と会社の倫理基準については、つねに成長を目指しています。私たちの研究室のチームは、原材料から最終の製品に至るまで、すべての工程において一貫性のある完璧な品質管理を行っています。これは最高の品質を実現するための欠かせない工程です。製品試験のためには、国際的に信頼のあるヨーロッパの研究所も頻繁に活用しています。」

『地球はすべての人間の要望を満たすのに十分なものを恵み与える。しかし、すべての人間の欲望を満たすことはしない』
マハトマ・ガンディー

さて、こうしてやっと巡り会えたヘナなのですが、CNP社の直輸入したヘナが日本で販売できるようになるまでは、それから3年ほどかかるのです……。というのは、究極的に細かい粉末になったヘナ製品について、パキスタンの研究者からアレルギーの心配が提示され、その解決に時間がかかったためなのです。このアレルギー検査を、プラジャパティさんはイタリアの研究所に依頼して徹底した試験をやってもらい、長い時間を費やしました。そしてついに皮膚病学的にも安全というお墨付きを得たのです。結果が出て、商品として日本で販売できるようになるまで、私も長く待たされたわけですが、これも「安全・安心」には代えられませんし、こうしたエピソードにもCNP社の信念の強さが表れていると敬服しています。

2014年1月、私は初めてラジャスターン州のCNP社の農場を訪れました。息子のタルン・プラジャパティ社長の案内で、会社に一番近いルニファームという農場を見学させてもらったのです。ここで「大地に根ざしたヘナの木」と初めて対面し、感動しながら写真のシャッターを切りました(このときに撮影したヘナの写真は僕の著書『最高のヘナを求めて』茅花舎、2017年刊、の表紙を飾っています)。タルンさんはCNP社の社長でありながら、薬用植物の研究者としても活動しています。ですからヘナだけでなく、どんな植物についての質問にもすぐに的確な回答を返してくれる様子に、私は今までに無い大きな信頼感を抱きました。また、案内されたラボで、専門のスタッフが緻密な実験と品質管理の業務を行っている様子も見せてもらいました。整備された農場を歩きながら、タルンさんからヘナ以外の栽培薬用植物についてもお話を伺いましたが、驚いたのはCNP社のカタログに掲載されている植物の写真は、すべてタルンさん自身が撮影したものだと伺ったことです。朝早くに畑を巡り、よく管理された大地と手入れされた薬用植物の生育を見守る大きな喜び。カタログの美しい植物写真は折々に撮影した中から選んで載せているとか。そんなお話の中にも大地と植物への深い愛を感じて感動すると同時に尊敬の気持ちが溢れて来ました。

この様な地道な研究と技術改革から生まれた製品を、より多くの方々の手元にお届けして行きたいと思います。

株式会社ラクシュミー 代表取締役 森田 要