新たな美容師人生の幕開け。そのままの美しさに還る自然派美容の道
-そっと寄り添える美容師でありたい。髪とともに、自分を愛し、生きていく。―
|新たな美容師人生の幕開け。そのままの美しさに還る自然派美容の道
私は今、2021 年に世界自然遺産となった故郷奄美大島で「生きた髪とイキイキと生きていく」をテーマに、自然派美容院を営んでいる碩(せき)あゆみです。
化学薬品に頼らず、植物の力を使ったヘナトリートメントやヘッドスパ、カットを通して、髪も心も、本来の自分へと整えていく時間を提供しています。
私にとっての自然派美容という定義は、自分のあるがままの美しさを知り、気づき、それをそのままに愛することです。
鏡に映る自分に「いい感じ、今日も素敵だね」と自然に声をかけられる女性が増えたら、家庭も社会ももっとやさしく、しなやかになっていく。
そんな想いを信じて、毎日髪に触れています。
この美容院の在り方は、自分自身の経験と体験から生まれました。
|世界をめぐり、自分と出会い直す
私が美容師になったのは、23 歳。少し遅いスタートでした。
実は、私はもともと教師を目指して英語を学んでいました。
奄美大島の小さな町で育った私は、「世界を見てみたい」という想いから国際文化を学ぶために進学し、教育についても並行して学んでいましたが、学びの中から、学校教育とは異なる形で人に何かを伝えたいと感じるようになったのです。
その道が、美容という形で人に寄り添う仕事へとつながるとは、当時は思ってもいませんでした。
「自分の価値観を広げるには、異文化に触れること」。
その気づきから、私は日本を飛び出し、ニューヨーク、そしてオランダ・アムステルダムで美容師としてのキャリアを重ねていきました。
私はもともと「広い世界で生きていきたい」「多くの価値観の中で自分を磨きたい」という想いがありました。
小さい島で生まれ育った私にとって外の世界はとても魅力的だったからだと思います。そのためには語学が必要だと感じ、英語を学んで広い世界で経験したことを伝えられるような教師になることを目指していました。
教えることを通して、誰かの心にそっと希望の光をシェアしたい。そんな気持ちがありました。「学ぶこと」「伝えること」「誰かが自分らしく輝くサポートをすること」。
今振り返ると、その本質は、美容師という今の仕事にも通じています。
髪に触れることで、その人の生き方や心にまで関わることができます。
そんな関わりの中に、美容という仕事の深さを感じています。
|化学薬品との向き合い、アメリカへの渡航、そして“本質”への気づき
私は、「人を美しくする仕事をあきらめたくない」という想いを持ちながらも、アシスタント時代にはひどい手荒れや体調不良に悩まされていました。全身に蕁麻疹が出たり、痒みで眠れず睡眠導入剤に頼る日々。皮膚科では「仕事を休みなさい」と繰り返し言われる毎日。それでも、美容師を続けたい一心で、どうしたらこの道を続けられるかを模索していました。
そんなとき、「アメリカでは美容師の手荒れが少ない」という記事を読み、「本当にそうなのか、自分の目で確かめたい」と思い、渡米を決意しました。
渡航を決めたもう一つの理由は、「もし私がこのアレルギーを克服して美容師を続けられるようになったら、同じような悩みを抱える人の支えになれるかもしれない」という新しい夢が心に芽生えたからです。
実際に現地のサロンで働いてみて、目にしたのは想像以上の違いでした。使用する製品、働き方、そして薬剤との向き合い方——どれもが日本とは大きく異なり、美容という仕事そのものに対する価値観がまったく違っていたのです。
その体験は、私に「日本の“当たり前”がすべてではない」と気づかせてくれました。
さらに、「どう生きるか」を深く考えるきっかけになりました。
次はオランダへ。美容の本質を見つめ直す旅
さらに学びを深めていく中で、ヨーロッパには環境に配慮した製品や、持続可能な美容の在り方を大切にしているサロンがあることを知ります。
私は次に、環境問題に積極的に取り組む人や企業が多く集まるヨーロッパ、オランダへ移住しました。
そこで出会った美容師たちは、私の手荒れを見て「体がちゃんと教えてくれてよかったね」「自分を大事にすることを忘れないで」と、優しく声をかけてくれました。
その場所では、髪だけでなく心にも寄り添うような接客があり、みんなが自然体で生きていました。
言葉が通じなくても、気持ちが通じ合う瞬間が何度もあり、「教える」「伝える」「癒す」ということが、すべて一つに重なっていくような感覚がありました。
この体験が、私の美容師としての土台をつくり、今の「自然派美容」という選択につながっています。
|コンプレックスだった髪が、私の個性に変わる
海外での経験の中で、私のコンプレックスだった髪に対する価値観も変化していきました。
剛毛で量も多く、広がりやすくて扱いづらかった髪。
それを抑えるためにストレートパーマやヘアカラーを繰り返していた私に、海外で出会う現地の人たちは「そのままのあなたが美しい」と教えてくれました。
そのたびに、長年の思い込みが少しずつほどけていき、自分の髪をようやく愛せるようになっていったのです。
髪を整えるだけでなく、心に寄り添うような接客、生き方そのものが自然体である人たちと過ごす中で、私の中で「教える」「伝える」「癒す」といった感覚が一つに結びついていきました。
|ヘナとの出会いと、美容の本質に還る旅
そんな海外での経験を通して、私の中で“薬剤に対する違和感”は年々大きくなっていきました。2 年が経った頃には、パーマやストレートをやめる決断をしました。でも、それでもヘアカラーだけはなかなか手放せなかったのです。「髪色を楽しむことまで、あきらめたくない」という気持ちがあったからです。
その頃に出会ったのが、“ヘナ”でした。
さらに、日本へ帰国した際に、森田要さんの著書を読み、美容の常識をくつがえすような内容に心が大きく揺さぶられました。当時の私は、美容師としての在り方に悩み、「人間の体や環境にやさしい美容を実現するのは難しいのでは」と落ち込んでいた時期。いっそ美容師を辞めて違う道に進むことも考えていました。
そんな中、森田さんのお話会に参加したとき、彼から言われたひと言が忘れられません。
「あなたの髪の毛から感じる“生きるエネルギー”はすごいね。」
その言葉を聞いた瞬間、長年コンプレックスだった自分の髪が「実は強さそのものだった」と気づかされたのです。
悩みの象徴だった髪が、自分の本質をあらわすものだった——その気づきが、美容師として、そしてひとりの人間として、私の生き方を大きく変えるきっかけになりました。
今、奄美で髪に祈りをこめて生きています
私は今、奄美大島の自然の中で、美容師として日々髪に触れています。
髪は、その人の生き方を映すもの。だからこそ、触れるときはいつも、「あなたはそのままで美しい」という祈りを込めています。
かつて教師を目指して学んでいたことも、アメリカで感じた言葉を超えたつながりも、すべてが、今の私の仕事の本質に活かされています。
|髪を通して自分を愛すること—— 全ての出来事には意味がある
振り返れば、あのときの手荒れも、苦しい夜も、森田要さんとの出会いも、
「Right time, Right place」——
すべてが、ちょうどいい時に、ちょうどいい場所で起きた、必然の出来事だったと感じます。
そして、同じように「そのままの自分を愛したい」と願う人のそばに、そっと寄り添える美容師でありたいと思っています。髪とともに、自分を愛し、生きていく。
